ファンファーレ

オキラクまとめ

書きたい時に書く場所

11月、初めて北野駅を訪れた。
京都は初めてではなく、もう何度も遠征のたびに出かけていたけど、北野駅を降りたのは初めてだった。
今回もやっぱり遠征のついでだったので、半日しか時間がなかったけど、どうしても行きたい場所があった。

3年くらい、読んでいるブログがある。
それを読むたびに心が落ち着いて、雨だとか風の音だとか、日常を愛せる気持ちになる。
ブログを書いている人が、京都にお店を出したのが2年前で、でも彼女は決してお店の場所や名前を載せなかった。
確かな意思を持って、北欧から集めてくる品物たちは子どもの頃に集めた天然石のように輝いて、キラキラして、ときめいた。
でもお店の場所はわからない。
遠方だから、と諦めていたある日
ブログタイトル お店
で検索すると、あっさり見つかった。

そこで今回の遠征に予定を組み込むことにした。
北野駅の改札を出て地上に上がると空はもう暗くなり始めていた。
駅からそう遠くはない、地図の読める私はすぐにお店の入ったビルを見つける。
看板にその名前を見たときは胸が高鳴った。
ゆっくりと階段を上がり、小さいその店のドアの前に立ち、ゆっくりと開けた。
そこには、ブログで紹介されていた、店主の方が彼からもらったという周年祝いの花が飾ってある。
彼女が信念を持ってデザイナーと相談して買い付けてきた品々がある。
ずっと来たかったこの場所に来ることができた感動が胸に広がり、旅の安心感も相まって少し泣いてしまった。
幸いその時間店主しか店におらず、その店主も検品に忙しそうだった。

しばらく心に広がる温かい感動と向き合って、今度は自分の欲求に目を向ける。
あれも欲しい
あれも可愛い
ああなんて自分は俗っぽいのだろう
今日の格好だってずいぶんとスポーティーでなんだか恥ずかしくなってきた

「散らかっててすみません」
店主が声をかけてくれる。
「あなたのブログを読んできました」
「東京から来たんです」
「憧れています」
いろんな言葉が頭の中を駆け巡ったけど、先述したように俗っぽいなと思って言うのはやめた。

忙しいはずの彼女が丁寧に説明してくれたコンパクトを自分へのプレゼントとして買った。
インポート、さらにビンテージのそれは決して安い買い物ではなかったけど、持っているだけで店を訪れた感動を思い出させてくれる気がした。
彼女の大切な思い出を借りたような気がした。
絶対無くさずに、毎日持ち歩いて、必ずこの店にまた戻ってこよう。
派手じゃないけど美しい手鏡が似合うような女性になろう。

たくさんの思いをくれたその店を後に、京都の街を夜ご飯を求めて2時間歩いたのは、また別のお話。

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